2022年2月22日、猫の日にちなんで

2月22日ニャンニャンニャン猫の日! 2022年の今年はさらにニャンニャンニャンと2が6つも並び、しかも寅年とあって、“スペシャルな猫の日”“奇跡の猫イヤー”なんていわれています。そこで今回のブログ「ムーミン春夏秋冬」では、ムーミンのお話に登場するに注目してみたいと思います。

ムーミンシリーズの動物キャラクターというと、小説『ムーミン谷の冬』の小さな犬、めそめそが有名かもしれません。プロダクトレーベルThe little onesに選抜されて、グッズも増えていますね。

めそめそ、どちらも出てくるのが絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』です。

主人公はめがねをかけたスサンナという女の子。

ごきげんななめのスサンナは隣で眠る黒ネコにやつあたり。
「ネコなんて、見たくもない!」「あべこべ世界になーれ!」と念じて、めがねを放り投げると、
よぼよぼだったネコが魔物みたいに巨大化、虎のように牙をむきだしに!
ゆうゆうと立ち去ってしまった
ネコを探して、めちゃくちゃになった世界をスサンナは旅します。
途中で知り合ったのが、ヘムレンさんめそめそトフスランとビフスランでした。

『ムーミン谷へのふしぎな旅』は他の絵本とは一味違う幻想的な水彩画で、生き生きとした表情のネコが描かれています。
スサンナはネコと再会できるのか、ネコは元の姿に戻るのか、ぜひ絵本を読んでみてくださいね。

 

次に、小説に登場する猫をご紹介しましょう。

このスニフと子ネコの絵、アラビアのムーミンシリーズの茶色いスニフ(2002-2008)のマグでご記憶の方も多いのでは。これは小説『ムーミン谷の彗星』の一場面です。

物語の冒頭、ムーミンやしきの庭を横切り、野原の先の薄暗い森の先へと探検に出かけたムーミントロールとスニフ。森の先には砂浜、そして海が広がっていました。
ムーミントロールは海が大好き。早速、海に飛び込んで、真珠を集めようと言い出しました。怖がりやのスニフは海に入れず、真珠を入れる箱を探すことに。

「おもしろいことはみんな、ムーミントロールが取っちゃうんだ。ぼくがちびだからといってさ」
(新版『ムーミン谷の彗星』講談社刊/下村隆一訳/畑中麻紀翻訳編集より引用、以下同)

ぶつぶつ言いながら、砂浜を歩いていたスニフは岩山のてっぺんをぶらついている子ネコを見つけました。白と黒のぶちネコで、細いしっぽをピンと立てています。

「子ネコちゃん! にゃんこちゃん、ここへ下りといでよ。ぼく、ものすごくさびしいんだ」

子ネコは黄色い瞳でちらっと見ただけで、さっさと歩いていってしまいました。スニフは濡れた岩山によじ登り、必死に子ネコを追いかけます。

(ちっちゃくて、やわらかくて、かわいらしい、ぼくより……ぼくよりずっと小さな子ネコ……、ああ、ぼくたち小さな生きものの神さま、どうかどうか、ぼくにこの子ネコをつかまえさせてください。ムーミントロールにすごいねっていわせてください……)

岩山の下には、波が打ちつけています。スニフはとても怖い思いをしながら、子ネコの後を追って進んでいきました。
すると、ふいに目の前にほら穴が現れました。きれいな砂地にすべすべの黒い壁、天井にぽっかり開いた穴から青空がのぞいています。

子ネコはそっけないそぶりで姿を消してしまいましたが、スニフは立派な洞窟を見つけたのでした。

物語は穏やかな幕開けから一転、ムーミン谷に彗星が接近し、その正体を突き止めるため、ムーミントロールとスニフが天文台めざして旅に出る、というスリリングな展開に。子ネコの登場シーンは多くはないのですが、旅の間もスニフはずっと子ネコのことを思い、自慢します。

そして、いよいよ彗星がぶつかる!というクライマックスで、スニフが見つけた洞窟と子ネコが重要な役割を果たします。こちらもぜひ続きを読んでみてくださいね。

 

コミックスでは、第11巻『魔法のカエルとおとぎの国』収録の「おさびし山のご先祖さま」にシマシマのネコが登場。ヘリコプターに乗って遠出に出かけたムーミンたちは、嵐に見舞われ、無人島に不時着。
そこで出会った三人組のご先祖さまがのろし火を焚いたために、海賊船が岩に乗り上げて難破してしまいます。沈みかかった船に取り残されていたネコを小舟に乗せてあげたのは、なんとお腹の白いねずみネコとねずみは仲良くムーミン谷にやってきますが、ムーミンやしきに住みついたわけではなさそうなので、きっと谷のどこかで気ままに生きているのでしょう。ちなみに、第12巻『ふしぎなごっこ遊び』にも、ネコがチラリと姿を見せます。島からやってきたネコと同じなのか、別のネコなのか、探して確かめてみてください。

トーベ・ヤンソンは動物たちをときにリアルに、ときにデフォルメして、さまざまな形で描いています。
自伝的小説『少女ソフィアの夏』には、マッペという猫が登場する「猫」という印象的な章があります。

トーベ自身はプシプシーナと名付けた黒猫を、パートナーのトゥーリッキ・ピエティラと飼っていました。ふたりがいかにプシプシーナをかわいがっていたか、ブログ「月刊 森下圭子のフィンランドムーミン便り『世界旅行の間のお留守番』で貴重なエピソードを知ることができますよ。

トゥーリッキがトーベに送った運命的なはがきも猫の絵のもので、トーベはその絵はがきをずっと大切に飾っていたそう。プシプシーナを描いた黒猫の絵はトゥーリッキの代表作のひとつでもあります。
ふたりの手による猫の絵とプシプシーナの姿はこちらのサイトをご参照ください。

トーベ・ヤンソン公式インスタグラムアカウント@ToveJanssonOfficial が投稿した1950年発行の雑誌『ガルム』の表紙にもたくさんの猫の姿が描かれています。
ムーミンシリーズ以外にも小説やイラスト、絵画など、たくさんの作品を残したトーベ。「猫」という切り口で見直してみるのもまた一興かもしれません。

萩原まみ