(79)ヘルシンキのムーミンショップ

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こちらが改装オープンとなったヘルシンキのムーミンショップ。ちなみにこの照明の色は赤になったり緑、白になることもある。ニョロニョロの目はもう少ししたら光りだす予定

待ち合わせの時間はきっちり守るフィンランドの人が、工事となると約束なんてあってないようなもの。駅やトラム線路なんてところですら大幅に遅れることが日常茶飯事なのだ。ムーミンショップも長らくお待たせしてしまいました。ショッピングモールの工事に合わせて改装工事を始めたムーミンショップは、予定から半月ほど遅れましたが、ついにオープンです。

お客さんが3人入るのが精一杯と思われるほどの小さな店舗から始まったムーミンショップ。ヘルシンキのショップは、今回はじめてムーミンらしさを意識した店長自らのデザインによる店舗になった。実は店長がムーミンショップをデザインしたのはこれが2つ目。はじめは空港のショップだった。今回も店頭には目が光るニョロニョロが待ち受けていて、ムーミンの挿絵を連想させる、ムーミン谷の自然を意識した什器を使っている。空間をたっぷり贅沢に使う、白を基調にしているのはフィンランドらしい。小さなお店であちこちに隠れるように置かれた品物を細かく見ていくのも楽しいけれど、ムーミンの挿絵を思い出しながら、のんびり歩いて目に入ったムーミングッズを手にとって...というのも楽しい。

夏至祭も終わり、多くの人が夏休みに入った。森の湖畔で暮らす人、海をセーリングする人、自転車で旅する人、バイクでツーリングする人。最近資料を読んでいたら、チョーカー島でトーベ・ヤンソンが『ムーミンパパ海へいく』を執筆していたというのを見つけた。ここは去年、自転車で群島の島巡りをしていたときに、私が特に気に入った島だ。なんだか嬉しい。

牛たちが草のよく茂る丘で気持ち良さそうに昼寝していたり、羊たちが日がな一日草を食んでた島。民家の庭にぽつりと建つがらくたとアンティークのお店、手工芸といいながら、庭でとれた野菜や果物や家で焼いたお菓子のほうが圧倒的に多かった集会所のマーケット。長くつづくリンゴ園の小径の先に突如あらわれたカフェ。どこにいても海からの風が気持ちよく吹いた。

2週間の自転車の旅が終わりに近づき、やっとのことで編み上げた毛糸の靴下をはいて海辺の岩で昼寝していた。トーベが住んでいた小屋はそのすぐそばにあった。彼女が夏を過ごしたのは50年代のこと。ムーミンが最も書かれていた時期だ。今年ははりんごの季節に行ってみたいと考えていたけれど、ひと夏ゆっくり過ごせたらなんていう気持ちがぐんぐん大きくなろうとしている。

森下圭子

オーランド諸島にある小さな島、チョーカー。トーベ・ヤンソンは『ムーミンパパ海へいく』をこの島の小屋で書き上げたと言われている