(84)色のついたムーミンたち

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アニメがきっかけのムーミンブーム、90年代の関連書籍の多くは、ムーミンに色が施されていた。

トーベ・ヤンソン生誕100年が来年に迫り、あちこちでトーベのエピソードが語られるようになった。意外な交友関係、スナフキンの絵誕生の瞬間を見届けた人の話、トーベが朗読するムーミンを聞いたことのある人の話など。これもまた最近聞いたトーベ・ヤンソンと友人の話。

友人とは女優ビルギッタ・ウルフソン。トーベ・ヤンソンが信頼していた友人のひとりで、トーベの指名で朗読やナレーションを担当することも多かった。昔からトーベをよく知るビルギッタにとって、90年代に登場しフィンランドでも大ヒットしたムーミンアニメはなんとも衝撃的だったそうだ。「ムーミンが青いなんて!」「っていうか、ムーミンたちにそれぞれ色がついてるなんて!いったいこの日本のムーミンはどういうことなの?ムーミンの世界が台無しじゃない!」と、芸術家トーベに対してあんまりだと、本人を前に言ったという。そのときトーベはこう答えた。

「あのね、想像してみて。このアニメで何百万という子供たちが笑顔になるの。最高じゃない。さ、この話はこれで最後ね。以上!」

青いムーミントロールに違和感を覚えたのはビルギッタだけではない。子供たちがムーミンアニメに夢中になる一方で、なんとなく違和感を覚えている大人たち。ムーミンショップでも青いムーミンを手に「なんで色がついてるの?」と聞いてくる人たちは2000年代に入ってからも続いていた。当時ショップで答えとして教えてもらったのはこうだ。子供たちがムーミンたちを識別しやすくするための配慮でムーミン、フローレン、パパ、ママそれぞれに色をつけているのです。ムーミンのグッズの世界は白いムーミンと色つきムーミンの両方が混ざっていて、そんな時期は随分と長く続いた。フィンランドでは現在ムーミンはすべてが白に統一されているけれど(目の色が違う)、混在の時代も、子供たちは上手に白いムーミンにも色つきムーミンにも馴染んでいた。

森下圭子

muumiuutiset.jpg 94年のムーミンニュースより。フィンランドではイベントに登場する着ぐるみムーミンたちは揃って白かった。