ムーミンママのモデルは誰?【本国サイトのブログから】

ムーミンママはみんなをケアする、ムーミン一家の中心的な存在です。誰もが自分が仲間だと感じられるように気を配り、おいしいパンケーキでみんなの気持ちをひとつにしてくれます。また、時には自分の気持ちを曲げることなく行動する一面だってあるんですよ。そんなムーミンママは、一体誰をモデルにしているのでしょう?

様々な芸術と同じように、ムーミンの物語にも実際のできごとや場所、人々からの影響が見受けられます。物語の筋と同じように、登場人物たちもまた、作者のトーベ・ヤンソンが世界をどのように見ていたかをさまざまな形で表しているのです。キャラクターの多くは、トーベの身近な人たちから影響を受けていると思われます。
ムーミンママのキャラクターが、トーベのすぐそばにいた人、つまり、トーベの母親を反映していることは明らかで、よく取り上げられます。

ムーミンママのインスピレーション

ムーミントロールはときどきトーベ自身の分身で、ムーミンパパは父親のヴィクトル・“ファッファン”・ヤンソンに似ていると言われます。そしてムーミンの物語と、トーベの実生活の核をなす三人のうちの一人、ムーミンママのインスピレーションの源は、トーベの母、シグネ・“ハム”・ハンマルステンだと言われています。


ハム・ヤンソンと赤ちゃんの頃のトーベ

 

ハムは、クリエイティブな自分の仕事と家庭を両立していた女性でした。彼女はイラストレーターとしても、画家としても成功を収めています。1929年から1962年にかけては、フィンランド銀行の紙幣やフィンランドの切手のデザインを手がけました。
ハムはムーミンママよりアウトドア派でしたが、二人とも反骨精神と、自身の創造性よって、伝統的な女性の役割に「囚われること」はありませんでした。『ムーミンパパ海へいく』(1965年)では、ムーミン谷へのホームシックにかかったムーミンママが、絵を描くことに慰めを見出し、上達していく姿が描かれています。

トーベの弟ペル・ウーロフ・ヤンソンと、姪のソフィア・ヤンソンも、ムーミンママのキャラクターにはハムの影響がはっきり見られると語っています。
ヘレン・スヴェンソンの著書『Resa med Tove』の中で、ペル・ウーロフはこう語っています。 
「母は私に、森の中で風や雲、蟻の巣や幹の苔を頼りにして道を見つける方法を教えてくれました。よくスキーで私の後ろを滑ったり、いたずらをぜんぶ許してくれたり、まるでムーミンママのように、穏やかで自信に満ちた温かな光を放っていたのです」

ムーミン最後の小説を通して描かれた別れ

ムーミンの最後の小説『ムーミン谷の十一月』は、ハムが亡くなった1970年に出版されました。驚くべきことにこの小説に、ムーミンたちは登場しません。この物語は、終わりと別れの物語なのです。
トーベの評伝を執筆したボウェル・ヴェスティンによると、ハムのクリエイティブな面と、トーベとの職業的な共通性は、ムーミンの物語全体に大きな影響を与えました。この『ムーミン谷の十一月』は、トーベとハムが共に過ごしたフィクションの世界への別れの物語だったのです。

ハムについてはこちらのサイトで詳しくご紹介していますよ(※英語サイト)。

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翻訳/内山さつき