ムーミン谷のさまよう放浪者 ニョロニョロ【本国サイトのブログから】

ニョロニョロは、地平線に向かってひたすら進み続けることだけを目指して生きている、ミステリアスな生きものです……。

ニョロニョロたちは、淡い白っぽい灰色をしています。キノコのような姿で、体から直接手のようなものが生えています。ニョロニョロは小さな白い種から生えてくるのですが、夏至の前の夜に蒔いたときだけです。雷雨のときには電気を帯びていることがあります。

“ニョロニョロは小さな白い種から生まれる”

ニョロニョロは、ムーミンの最初の物語『小さなトロールと大きな洪水』(1945年)に登場します。ムーミンママは、ニョロニョロたちがムーミンパパをだまして、旅に連れて行ってしまったのだと語ります。ムーミンの本にはよくニョロニョロが登場しますが、いつも動き回ってあちこちさまよっていることを考えれば、当然のことなのかもしれませんね。

一年に一度、ニョロニョロたちはあちらこちらからからやってきて、遥か沖合にあるはなれ島で集会を開きます。それは毎年6月なのですが、なぜ集まるのかはよく分かっていません。ニョロニョロたちは耳も聞こえず、話すこともしないからです。

ニョロニョロ豆知識

ニョロニョロは、燃え尽きた雷のような匂いがします。おそらく、雷雨のときに帯電しているからでしょう。
目は丸く、通常は色がありませんが、ときおり変わることもあります。
食べたり、寝たりすることはありません。
群れで行動し、決してひとりだけで行動することはありません。
小さな白い種から生えてきますが、夏至の前の夜に蒔いた種だけです。
めったに誰かに危害を加えることはないのですが、ビリッとした電気ショックを与えることがあります。
ニョロニョロのことは、誰にもわかりません。でも、安定した生活に落ち着きたくないムーミンパパは、ニョロニョロたちがあてもない旅を続けていることに憧れて、ときおり一緒について行ってしまいたくなることがあるのです……。

 

ニョロニョロについての名言

「たいていは世界中をさまよっていて、どこにも落ちつくことはないし、まわりのできごとに関わることもない。関心を持たない。ニョロニョロがよろこんでいるのか、おこっているのか、かなしんでいるのか、おどろいているのか、だれにもわからない。感情というものがまったくないんじゃないかしら」
『小さなトロールと大きな洪水』(冨原眞弓/訳 講談社)より

「パパがいってたけどね、ニョロニョロたちは、どこかにあるあこがれの地をめざしているけど、どうしてもたどりつけないんだって……」
『ムーミン谷の彗星』(下村隆一/訳 講談社)より

「ニョロニョロ、だよ。あいつらはただ、ただよいつづけているんだ。いつまでたっても気の休まることがないんだね」
『ムーミンパパの思い出』(小野寺百合子/訳 講談社)より

翻訳/内山さつき