ソフィア・ヤンソンが語る、ヤンソン一家における読書の役割
トーベ・ヤンソンの姪ソフィア・ヤンソンは、ヤンソン一家における本と読書の役割と重要性について以下のように書いています。
読書の楽しさは、日々の環境や生活の自然な一部として読書を体験することと繋がっています。私の子ども時代の家には、子ども向けのものから大人向けのものまで、小説、コミック、ノンフィクション、絵本などの本がたくさんあって、ヤンソン家では常に読書が大きな役割を果たしていました。本は私の生活に欠かせないものです。本のない世界なんて想像できません。
「トーベは途切れることなく本を読んでいました」
トーベもまた、途切れることなく本を読んでいました。子どもの頃は、よく懐中電灯をベッドの中に持ちこんで、他の人が寝ている間も布団の下で本を読んでいたんです。とにかく夢中になった物語を読み終えずにはいられなかったんですね。後年、トーベの本棚は芸術、嵐、哲学、宗教に関する本であふれていましたが、何よりもフィクションを愛していました。主にスウェーデン語で読み、ドイツ語とフランス語でも少しずつ、そして時々フィンランド語でも読んでいました。幼い頃から英語の本をかなり読んでいたのは、古書店の英語の本が安かったことと、母親がイギリス文化に傾倒していたこともありますね。
読書するトーベ・ヤンソンと母シグネ 撮影/ペル・ウーロフ・ヤンソン
トーベの友人や家族の輪の中では、熱心に本の貸し借りが行われていました。また、トーベが幼い頃はヤンソン家ではそれぞれが読んだ本について話し合うことが当たり前のように行われていました。大事なのは、読書体験を共有することで本の理解が深まり、新しい視点が開けるということです。それは文学についてだけではなく、人間についての視点でした。
絵を描く子どもの頃のトーベ
トーベが子どもの頃に描いた、様々な絵が保存されていますが、そこには何かしら人の心を強く惹きつけるものがあります。母シグネは、トーベが絵を描きながら語った物語を書き留めていました。絵の背景には、常に物語がありました。想像力が言葉や物語から生み出すイメージ、あるいは反対に絵から生み出す言葉や物語、それぞれが収まる場所を用意するのが、とても重要なことなのです。
母親と一緒に絵を描く子どもの頃のトーベ・ヤンソン
主に絵を描き、文章を書くことで生計を立てていたトーベは、最終的にはビジュアル・アーティストになりました。トーベは、絵とイメージとがどのようにしたら調和するかをよく考えていたのです。彼女は絵を通して考え、ときには文章に添えて描くこともありました。彼女の大人向けの短編小説では、テキストは絵画のように形作られ、まさにトーベが描く絵のように強い全体性を作り出していることが明らかにされています。彼女は読むこと、書くこと、描くことを区別していなかったのです。
トーベ・ヤンソン 撮影/エヴァ・コニコフ
「物語は想像力への道」
幅広い語彙は、文章であれ映像であれ、現代社会で生み出されるコンテンツにより豊かなニュアンスを与える力を持っています。頻繁に読み書きをすることで、語彙はより豊かになるでしょう。今日のデジタル化、高度なビジュアル化が進む世界において、映像からだけでは得ることのできない人生観を与えてくれる本は、ますますその重要性を増しています。言葉には多くのニュアンスが含まれており、それは私たちが生きているこの世界や、自分の思考や感情を理解し、表現することを助けてくれるのです。物語は、想像力へと導く道であり、それを通して私たちはもう一つの世界に飛び込み、平穏を見出す機会を得ることができます。私たちは本を読んでいるとき、本の中に描かれている世界があたかも現実のものであるかのように思い浮かべることができます。そうして想像力は広がっていくのです。
本を手に取るのに、悪いタイミングなんてありません! 7歳でも、25歳でも、75歳でも、読書の楽しさはいつでも味わえます。本を読むのが久しぶりでも、全く読んでいなくても、恥ずかしい思いをする必要はないのです。私自身、数年前までは多忙を極め、本を読む時間を多く取れなかった時期がありましたが、最近は読書をする機会が増えてきました。少しずつでも、読んでいさえすればいいのです。
ソフィア・ヤンソン
翻訳/内山さつき